【運営】:認知症介護研究・研修センター(東京、大府、仙台)
  我が国の認知症介護に関する研究・研修の中核的機関として
  平成12年度に厚生労働省により設置されました

BPSDケア実践事例

事例NO 3

【取り組み前の認知症の人の様子】

*ケアを実施する前の認知症の人がどのような様子だったかを示しています。
服薬、入浴、排せつ介助、口腔ケアに拒否がある。 服薬については、職員が介助しようとすると席を立ってしまわれたり、散剤に息を吹きかけて飛び散らせようとする。 入浴については、声をかけてもその場から動こうとされない。脱衣室まで移動しても、衣類を脱ごうとされない。職員が脱衣の介助をしようとすると職員をたたいたり、掴み掛ったりする。 排せつ介助は、失禁されて衣類等の汚染もあって、声掛けをしてトイレへ誘導してもトイレに入ろうとしない。トイレに入っても、便座に座ろうとしなかったり、ズボンを下ろさずに便座に座りそのまま動こうとしない。 口腔ケアについては、促しても自分で行おうとすることはほぼなく、介助しようとしても席を立ってしまったり、開口していただけなかったり、開口しても歯ブラシを噛んで介助させていただけなかったりする。

【数値での評価】

*ケアを実施する前の評価尺度での評価点数を示しています。
指標・尺度等 前評価
BPSD(NPI-Q)点数が高いほど重度 総合点(満点80点) 18点
重症度(満点30点) 9点
負担度(満点50点) 9点
意欲(Vitarity Index) (満点10点、点数が高いほど意欲高) 5点
QOL(Short QOL-D)点数が高いほどQOL高 総合点(満点36点) 25点
陽性(満点24点) 16点
陰性(満点12点) 9点
重症度(0点:症状なし、1:軽度、2:中等度、3:強い、4:激しい) 3点
頻度(0点:まったくない、1:少しある、2:たまにある、3:よくある、4:いつもある) 4点
食事量 10/10
食事時間 10分

【事例概要】

*認知症の人のADLや認知機能、薬や疾患等、認知症の人の状態を理解するための情報を示しています。
BPSD 介護への抵抗
氏名 A氏
年代 80歳代前半
性別 女性
障害高齢者の日常自立度 J2
認知症高齢者の日常自立度
要介護度 要介護4
ADL(Barthel Index) 満点100点 55点
IADL 満点:女性8点、男性5点 0点
改定長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)
満点:30点、20点以下で認知症の疑い
3点
自覚(介護職による評価)
うつ(GDS5)
満点:5点、2点以上でうつ状態の疑い
4点
せん妄(DST)
利用している薬
治療中の疾患
過去3か月での体重減少
視力
聴力
麻痺や筋力低下

【取り組み前の生活】

*ケアを実施する前の認知症の人の水分摂取量や睡眠、排泄、生活における役割用の情報を示しています。
指標・尺度等 前評価
水分摂取量(一日トータルの摂取量)
熟睡日数 1日
平均睡眠時間 7時間
過去1週間で排便のあった日数 4日
過去1週間の役に立つ機会
過去1週間の楽しみや趣味の活動
過去1週間のゆっくりとくつろぐ時間
過去1週間の家族や介護職等と交流
過去1週間の外に出る機会

【介護職の考える原因】

*これまでに示した情報をふまえて、どのようなことを原因と考えたかをチェックしてあります。
前評価

【アセスメントとケアの方針】

*アセスメントのまとめやケアの方針について担当者に記述していただいた文章です。
普段は、ご本人のペースを崩さないように配慮した声掛けや手段を駆使しトイレ・口腔ケア・入浴介助を行っています。拒否が合った際は時間をおき、忘れたころに再度試みています。それでも応じてくださらない場合は、例えばトイレの際に介護への抵抗があった際、トイレに行く必要性・今便失禁の状態であるなどの状況を説明して同意の上応じていただけるよう対応しています。それでも応じてくださらない時、ご本人に不利益が生じる場合は数人の職員で対応。

【実施したケア】

*ここでは、この事例に実際に実施したケアのうち、介護職員に有効だったと判断されたケアを列挙しています。
実施したケア
今何をしているか説明する他の高齢者との交流促進
日常的に本人の好きな話題で会話する介護への抵抗がある時に本人の訴えをよく聞く
介護への抵抗がある時の支援をチームで確認する。介護への抵抗がある時の支援をチームで検討する
介護への抵抗がある時の会話のスピードを調整する

【前後の変化(数値)】

*ケアを実施する前後の評価尺度での評価点数を示しています。前評価の欄が取り組み前の点数で、後評価が、ケア実施後の点数です。
指標・尺度等 前評価 後評価 増減
(後評価-前評価)
BPSD(NPI-Q)点数が高いほど重度 総合点(満点80点) 18点 18点 +0点
重症度(満点30点) 9点 9点 +0点
負担度(満点50点) 9点 9点 +0点
意欲(Vitarity Index) (満点10点、点数が高いほど意欲高) 5点 5点 +0点
QOL(Short QOL-D)点数が高いほどQOL高 総合点(満点36点) 25点 26点 +1点
陽性(満点24点) 16点 16点 +0点
陰性(満点12点) 9点 10点 +1点
重症度(0点:症状なし、1:軽度、2:中等度、3:強い、4:激しい) 3点 2点 -1点
頻度(0点:まったくない、1:少しある、2:たまにある、3:よくある、4:いつもある) 4点 3点 -1点
食事量 10/10 10/10 -
食事時間 10分 10分 -

【ケア実施後の認知症の人の様子、前後の変化(質的評価)】

*ケアを実施した結果、どのような変化があったか、担当スタッフに記述してもらった文章です。
不快な事(失禁・眠気・空腹・寒暖・痛み・痒み・帰宅できない等)があった際にどうしたら良いか分からなかったり、上手くできなかったり、他人にしてほしくなかったり、何をされるか分からない等で介護への抵抗の状態にあると考えられます。ご本人の意向をまずは受け止め、ご本人の気持ちに寄り添ってペースを合わせてケアに繋げていくことで介護への抵抗が少し減ってきています。 職員の声掛けの仕方、対応の仕方によってご本人が気持ちよくケアに応じていくださることが今回の試みでわかりました。今後も職員の声掛けの仕方、対応の仕方に留意し、ご本人が気持ちよくケアに応じてくださる環境づくりに努めたいと思います。

【取り組み前後の生活の変化】

*ケアを実施する前後での認知症の人の水分摂取量や睡眠、排泄、生活における役割等の変化を示しています。前評価が取り組み前の状態で、後評価が取り組み後の状態です。
指標・尺度等 前評価 後評価
水分摂取量(一日トータルの摂取量)
熟睡日数 1日 4日
平均睡眠時間 7時間 8時間
過去1週間で排便のあった日数 4日 3日
過去1週間の役に立つ機会
過去1週間の楽しみや趣味の活動
過去1週間のゆっくりとくつろぐ時間
過去1週間の家族や介護職等と交流
過去1週間の外に出る機会

【取り組み前後の介護職の考える原因】

*取り組み後で、どのようなことが原因でBPSDが発生していると考えたかをチェックし、前評価と比較してあります。
前評価 後評価

【担当者による振り返り】

*以下の内容は、取り組み後で、改めて考えたときに、認知症の人は、何に困っていたか、何を求めていたか、どのようなケアがよかったか・良くなかったかの振り返りを担当スタッフに記述していただいたものです。
何に困っていたか 何を求めていたか 何がよかったか・よくなかったか
帰宅願望 「どうしましたか?元気がないですね?」と尋ねると「千葉に帰る」とおっしゃる。帰宅願望があるがどうしたら良いか分からなかった為困っておられました。 パットが失禁で重くなっており、「体操の前にトイレに行っておきましょう」と声掛けすると「行かない」とおっしゃり壁際から動こうとされず機嫌が悪くなりそうな為、時間をおき再度居室で臥床している際に「食事の席に来てください」と声掛けし退出。しばらくしてご本人が居室から出てこられたため夕食について話をしながら「トイレに寄って行こう」と誘導すると拒否なく介助させてくださった。  ご本人のトイレに行きたいタイミングにトイレに誘導してほしかったのではないかと思いました。 口腔ケアセットをご本人のもとへ持っていきながら、おやつの話題を出し「今日のおやつはおせんべいです。おせんべいは好きですか?」と話しかけると興味を持って下さり、そのまま口腔ケアを行うと拒否なくブラッシング、うがいを行ってくださる。ご本人の興味関心に合わせた声掛けやペースにすることが結果として良いケアになった。  トイレに座っていた為(ズボンを下ろさず)、「あて物を変えましょう」と声掛けすると「いいよ!」と口調荒く拒否される。「今、昼用のあて物がついているので夜用にしましょう」と声掛けすると「関係ねえ!」とおっしゃる。声掛けのスピードはそのままで声量を大きくして「変えましょう!」と強めに声掛けすると「いいよ!」とさらに口調が荒くなるり、拒否のため交換できませんでした。ご本人のペースに合わせないケアは結果として良いケアではなかった。